アルコール性肝障害とは

アルコールにより引き起こされる肝臓疾患のことをいい、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、肝細胞ガンに進行します。大量のアルコールを摂取することで肝臓の細胞が変化してしまい、働きが衰えていくのです。

アルコールの過剰摂取でまず起こるのはアルコール性脂肪肝です。これは、肝臓がアルコールの処理を優先して脂肪の代謝を後回しにするために、代謝されない脂肪が肝細胞にたまる状態です。そのまま大量に飲酒を続けると、アルコール性肝炎が起こります。
アルコール性肝炎のなかには、肝性脳症(かんせいのうしょう)、急性腎不全、消化管出血などの合併症を伴い、1カ月以内で死亡に至る重症型のアルコール性肝炎もあります。重症化しない場合でも長期に大量飲酒を続けると、細胞が活性化して線維が増殖した状態のアルコール性肝線維症(かんせんいしょう)を経て、アルコール性肝硬変になることがあります。肝硬変では文字どおり肝臓が硬くなり、肝機能の低下が進みます。また、ウイルス性肝炎を合併している場合には肝硬変に進行するのが速く、肝細胞ガンを合併しやすいため注意が必要です。

飲酒の機会は比較的男性に多いでしょうが、同じ量を長期に渡り飲酒すると女性のほうが早く肝障害があらわれることがわかっています。

何が原因?

アルコール性肝障害の原因は慢性的な大量の飲酒です。これが肝臓に障害を引き起こすことは昔からよく知られていますが、実際には、どの程度飲酒すると危険なのでしょう。

日本では1日平均150g以上のアルコールを飲む人を大酒家(たいしゅか=おおざけ飲みのこと)と呼びますが、この量はお酒に換算すると、日本酒で約5合、ビール(大ビン)で約5本、ウイスキー(ダブル)で約5杯になります。
アルコールの分解能力は人によって違うので、適量がどれくらいかというのは具体的にはいえませんが、日本酒にして1日5合以上を毎日10年間飲み続けた大酒家は、5人に1人は肝硬変になるといわれています。
日本酒1合に含まれるアルコール量は約28gです。なお、厚生労働省の『健康日本21』運動では、節度ある適度な飲酒として、純アルコール量は1日平均約20g程度とされています。

どんな症状?

アルコール性脂肪肝は日本酒換算で5合程度を5週間ほど続けただけで引き起こされるので、大量飲酒者のほとんどに認められますが、通常は無症状です。1日に3合以上の飲酒を続けると、およそ2割の人がやがてアルコール性肝炎を発症し、発熱、食欲不振、黄疸(おうだん)、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢などの症状があります。
さらに症状が進んでアルコール性肝硬変に至ると、黄疸のほか、下肢のむくみ、腹水、出血や吐血などの症状があらわれるようになります。

お酒が好きで普段よく飲んでいるという人は、定期的に検査を受けるのがおすすめです。
断酒できることが理想ですが、どうしてもやめられないという人は、できるだけ肝臓に負担をかけないようにお酒を上手に飲むようにしましょう。