中国の「本草書」に記載されていた驚くべき内容

ウコンが生薬としていかにすぐれた特性をもっているかということから説明しましょう。ウコンは中国では古くから神秘の薬草として知られています。

中国には薬草の性質を詳しく調べて記録した本草書といわれる書物が数多く残されていますが、そのなかには、ウコンの効能に関する記録もあります。それによれば、ウコンには消炎・鎮痛作用、健胃・利胆作用、そして、破血・活血作用、活血・行気作用などの効能があるというのです。
その他のウコンの薬効はこちらです。

これらを簡単に説明しますと、まず、破血・活血作用とは滞っている血のめぐりをよくすることであり、活血・行気作用とは血のめぐりをよくして気の流れをよくすること皇息味しています。

もともと中国では、かなり昔から薬草への関心が高く、薬草のことを本草と呼んでそれらの香りや味、薬効を調べて分類した書物、すなわち本草書がたくさん伝わっています。そのなかでも中国最古の本草書といわれているのが古代の漠の時代にまとめられた「神農本草経」です。これには356種類の薬草が上薬(神仙薬)、中薬(強壮薬)、下薬(治病薬)の3種類に分類されて見事にまとめられています。

ウコンの名前が薬草として具体的に登場するのは、明の時代に記された「本草綱目」や「万病回春」、「新修本草」という書物です。

これらは日本の江戸時代におい丁も漢方医学に関する必読書として読まれたようですが、そこにはウコン.のことが詳しく記されています。

特に「本草綱目」は、明の時代の李時珍( 1518〜93)という人物によって編纂されたもので、全体が52巻という膨大な情報を扱った大書です。李時珍は30年もの歳月を費やして、当時すでに知られていた薬物に関する情報を整理し直し、1578年に「本草綱目」を完成させました。

そこに取り上げられている薬物は「神農本草経」の5倍以上で、1892種にも及ぶ空前絶後のものです。当然の成り行きとして、その後の中国や日本の本草学に計り知れない影響を与えたことはもちろんのことです。

「本草綱目」が伝えるウコンの効能

では、この「本草綱目」は、ウコンについていったいどんなふうに伝えているのでしょうか。実は、そこにはウコンとキョウオウが区別して扱われています。
この場合のウコンとは秋ウコンのことであり、キョウオウとは春ウコンを指しているものと思われます。ちなみに、現在の日本では秋ウコンを総称してウコンと呼んでいるのに対して、現在の中国では反対に春クコンを総称してウコンと呼んでいます。

まず、ウコン(秋ウコン)についての記録を見ると
「味は辛く苦し、寒にし毒なし。主治は心腹の血積(逆上して鬱血するこの)に気を下す肌を生じ、血を止め、悪血を破る。血淋、尿血、金瘡(切り傷)を治す」
と伝えています。

次にキョウオウ(春ウコン) については
「主治は心腹の血積、しゅご。気を下し、値を破り、風熱を除き、ちょうか、血塊を治し、月経を通じ、ぼくそんを治し、暴風痛、冷気を止め、食物を落付かす。効力はウコンより列し」と伝えています。

ちなみに、やはり同じく明の時代に記されたとされている「新修本草」にも同じような記述があります。さて、これらの記述に出てくる「血」という言葉には、今の私たちが考えるようないわゆる血液だけではなくて、他にリンパ液なども含めた人体内を流れるものすべてという意味があります。

このような「血」の流れが悪くなってしまい、滞っている状態にあることを「瘀血(悪血)」と呼んでいます。この状態が続くと、体にいろいろな病気が起こりやすくなり、いずれは何かのきっかけで発病すると考えられました。

ですから、「瘀血を治し」とあるように日頃から「瘀血」になりやすい体質を転換しておくことがとても重要であり、そのためにはウコンやキョウオウが有効であるというわけです。確かに、病気予防の最善策としては日頃から病気にかかりにくい体質を作っておくことがいちばんで、そのために効果的な働きをしてくれるのがウコンやキョウオウであると「本草綱目」は教えているのです。