ウイルス肝炎について

『ウイルス肝炎』とは、肝炎ウイルスが原因となる肝臓の炎症性疾患のことをいいます。肝炎の原因にはアルコールの飲み過ぎや肥満、薬剤によるもの、肝炎ウイルスがあげられますが、日本ではウイルス性による肝炎が80%を占めるといわれています。日本人に多いのは、A型、B型、C型といわれるウイルス性肝炎です。それぞれの肝炎については次のようになります。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスは生水や生ものを口にすることによって、口から侵入します(経口感染)。またそれ以外には性行為でも感染の可能性があります。東南アジアなど衛生環境のあまり良くない地域へ旅行する人は注意が必要です。A型肝炎ワクチンの接種を行うことでA型肝炎を予防することもできます。日本での感染源はカキなどの二枚貝類を生や加熱不十分の状態で食べること。潜伏期間は長くて1ヶ月半くらいですから感染の目安になります。

成人が感染すると黄疸が出ることが多く、発熱、倦怠感、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐といった症状があります。一般に、子供では軽症で済み高齢者ほど重症になりやすいですが、2ヶ月ほどで肝機能が回復します。A型肝炎の多くは一過性の急性肝炎症状で終わり、強い免疫が働いて次にかかることはありません。慢性化することもほとんど無いといわれています。

 

B型肝炎

B型肝炎ウイルスは血液や性行為を介して感染します。感染経路は主に、出生時の母親からの感染による母子感染(垂直感染)と、性行為や輸血、針刺し事故などによる感染(水平感染)です。しかし、現在の日本では厳しい検査が行われているため、輸血による感染はほとんど起きていません。また、成人後の水平感染の多くは一過性であることが多いです。

日本には150~200万人のB型肝炎ウイルス保有者がいるとみられていて、持続感染者(キャリア)と呼ばれています。免疫能力がまだじゅうぶんに発達していない幼児のうちに感染するとウイルスを撃退することができずに、見た目にはわかりませんがキャリアは何年もにわたり体内にウイルスを保持しているのです。ただ、キャリアの全ての人が発症するのではなく10%くらいが肝炎発症となりますが、発症してもそのうちの90%くらいは自然治癒し、慢性肝疾患になるのは、残りの10%くらいのキャリアだといわれています。

B型肝炎ウイルスに感染した場合、その多くは無症状のまま経過するのですが、20~30%の人が急性肝炎を発症し、肝硬変や肝ガンに進行することもあります。そして、1~2%が劇症肝炎化します。劇症肝炎では急激に肝細胞全体にわたって障害が起こり、肝臓の機能低下による意識障害も起こります。劇症肝炎には有効と思われる内科的治療法がほとんど無く、発症すると合併症なども起こり、救命率の低い恐ろしい肝炎です。

 

C型肝炎

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。ウイルスに感染している人の血液が他の人の血液の中に入ることで感染しますが、日本の感染者の多くは、C型肝炎ウイルスが発見される前の輸血や血液製剤、注射針が使い捨てになる前の注射器の使い回しなどで感染したものと考えられています。現在では、刺青やボディーピアス、覚せい剤の回し打ちなどが問題になります。持続感染者(キャリア)の数は、B型肝炎ウイルスと同じく200万人くらいいるとみられ、何年も経過してから慢性肝炎として発見されることもあります。

軽い症状のまま経過することもありますが、70%くらいの人は慢性肝炎になります。状態が持続すると肝硬変、さらに肝ガンに移行するといわれています。肝硬変は、長期間の肝臓の炎症で細胞が壊れたり減少してしまい、それを補うように線維成分が増加し、肝臓が硬くなってしまう状態をいいます。そして肝硬変になると、肝ガンになりやすく、食道静脈瘤の破裂など重大な合併症を引き起こしやすくもなります。

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