現代医薬品の副作用の問題を背景として、1976年から漢方薬が健康保険でも使用できるようになり、いわゆる漢方ブームといわれる現象が起こりました。それにともなって医師の間でも本草学が教える上薬に対する関心が高まり、現代医学では、「アダプトゲン」という用語も生まれました。
この用語の薄味は、毒性がないこと、作用が特定の臓器に限定されないこと、生体の正常化作用をもつこと、などの条件を滴たしている薬を指しています。
その点では、ウコンはまさしく上薬であり、アダプトゲンとしての条件を満たした生薬として、今大きな注目が集まりつつあります。そこで、こうした生薬としてウコンが著しい特性をもっていることを正しく理解するために、現代医学における生薬治療の役割について見ておきたいと思います。
現代医学の進歩に貢献してきたはずの医薬品は、きわめて鋭い速効性をもつ半面、かなり危険な副作用をもっていて、患者さんに多くの犠牲を負わせてきたことも事実です。それに対して、少しでも副作用の危険のない治療法が求められるようになり、アダプトゲンとしての生薬への期待が高まってきています。世界的にも生薬治療はしだいに勢いを得てきています。
例えば、ガンに対する免疫療法剤などは生薬のなかから発見される可能性が、かなり大きいと思います。それから、エイズに対して現代医学は有効な治療薬を見いだしてはいませんし、多少有効性があるといわれる薬剤も、実際には副作用がきわめて強く、治療に用いるにはかなりの危険性をともないます。
これに対して、漢方薬や生薬をうまく組み合わせて用いれば、エイズ発症を遅らせられる可能性は十分にあります。それどころか、今後の研究次第ではまったく発症させないようにできる可能性もあります。
専門家によっては、エイズの治療薬は天然の生薬から発見されるだろうという人もいます。
医師は、「東洋医学」に対して認識の浅い医師にも漢方薬を含めた生薬治療の体系を了解してもらい、さらなる医療の進歩に貢献していくのが理想です。といぅのは、二十一世紀を目指した医療は、「医学の東西融合」に向かうべきでしょう。
つまり、「東洋医学」と「西洋医学」がそれぞれの特性を活かして協力しあうことによってしか、現代医学の限界を超えていくことはできないのです。
一般に「西洋医学」と呼んでいるのは、18~19世紀にヨーロッパで発展した科学的な方方法論ではあくまでも科学的な方法によって病月したがって、「西洋医学」ではあくまでも科学的法論に基づいた医学のことです。
病気の原因をつきとめ、治療する方法を確立しようとしてきました。これが明治維新を境に日本に入ってきましたが、主にはドイツ医学として輸入されました。その後は「西洋医学」こそが医学であると考えられるようになり、それまであった漢方医学などは公式の医学としては認められないようになってしまいました。
第二次大戦後は、イギリス医学を継承したアメリカ医学の影響が大きくなっています。ところが、こうした「西洋医学」もさまざまな問題を抱えていることがわかってきました。薬の副作用です。というのは、医薬品としては有効成分最学的に分析し、抽出したものを使用するために、切れ味は確かに鋭いのですが、その分だけ副作用の危険性も高くなってしまいます。
ときには、治療のために用いた薬の副作用のために、医原病といってもっと重症の病気を引き起こすことすらあります。
生薬は病気にトータルで作用です
-方で、「東洋医学」がにわかに脚光を浴びつつあることは周知のとおりです。ところで、日本では「東洋医学」と「漢方医学」はほとんど区別なく用いられていますが、本当は「東洋医学」と呼んだほうが「漢方医学」と呼ぶよりももつと広い意味になります。
というのは、「東洋医学」には中国から伝わった「漢方医学」だけでなく、インドの伝統医学や東南アジア諸国に伝わる医学も含まれているからです。
完全ガイド – 漢方薬
「東洋医学」が「西洋医学」と異なるところは、まず第一に、病気の発生原因を探ろうとするよりは、病人の訴えや体に起こっている変化を見ながら治療を行おうとする点にあります。つまり、「病気を治すより病人を治す」ことが大切だと考えるのです。もう1つは、その治療薬は大部分が生薬で、天然のものをほとんど加工せずにそのまま用います。
そのため、速効性は低いのですが、副作用は起こりにくいのです。しかも、天然の生薬にはいくつかの成分が含まれているため、ある特定の症状にのみ有効であるという現代医学とは対照的に、いろんな病気に総合的に作用を発揮します。
アダプトゲン(上薬として注目されるウコン
生薬と似た言葉に漢方薬とか民間薬という言葉があり与。これらの言葉の使い方に関連して私が日頃から心配しているのは、一般人だけでなく専門の医学者ですら、その意味をはっきり知らないま意見を述べたり、誤った判断害している例が多いことです。
そこで、簡単にこれらの言葉の意味を紹介しておきましょう。まず、漢方薬とは、「いくつかの生薬を組み合わせて1つの薬方としたもの」です。しかも、この場合、生薬の組み合わせ方や投与する条件が誰も明かなように定められていなければなりません。
これに対して民間薬では、投与する条件は定められていません。ただ、便秘に効くとか、痔によいというように、どのような症状に有効かということだけが記されています。また、必ずしも薬の処方内容が公表されていないのも民間薬の特徴です。
薬の処方内容が公表されていないのも民間薬の特徴です。では、生薬はといえば、これは特定の植物、鉱物、動物に由来するものです。そのなかでも特に代表的なのは植物、つまり「薬用植物」です。そのために、中国では古くから生薬となる動植物を収録した書物を「本草書」と呼んできたわけです。
中国最古の本草書である「神農本草経」では、同じ薬物のなかにも上薬、中薬、下薬の3ランクがあると述べています。
こうした分類からすると、多少の違いはあるにせよ、副作用の危険性をもっている現代の医薬品の多くは下薬だといってもいいすぎではありません。これに対して、毒性がまったくなく、長期間使用しても副作用の心配がないウコンは問題なく上薬といえるでしょう。