ウコン

幅広い効能をもつウコン

昔から貴重な薬草として扱われてきたウコンですが、薬草は、特定の病気に対してのみ効果をあらわすのではなく、幅広い範囲にわたり効き目をもつものだとされています。

ウコンは、特に肝臓病に優れた効果があることで知られていますが、やはり、多方面に対する効能をもっています。それらの病名や症状については、次のようなものがあります。
肝臓炎・胆道炎、胃炎、胆石症、カタル性黄疸、心臓病、高血圧、低血圧、食欲不振、腹痛、吐血、下血、子宮出血、月経不順、膿種、痔、創傷、関節炎、結核、肋膜炎、喘息、湿疹など。
これらの症状に対して、ウコンの粉末を単体で使用したり、病気によっては他の生薬と配合して漢方に用いたりします。

作用としては、肝解毒機能促進、健胃、利尿、通経、補温、止血作用があります。
またウコンは薬浴として用いられることもありますが、薬浴の効能には、腰痛、五十肩、打ち身、捻挫、痛風、慢性リウマチ、慢性便秘、脱肛、膀胱炎などがあります。薬浴をする場合に、合わせてウコン茶を飲むのが良いとされています。

ウコンを実際に利用した人たちに調査を行った結果わかった、病名や体験した人たちの改善例・治癒例があります。
ただし、対象者はほとんど沖縄の人たちであり、人数も少なかったので、今後はもっと数多くの病種が増えるのではないかと考えられています。
胃潰瘍、胃弱、胃酸過多、顔のむくみ、関節炎、眼底出血、肝炎、肝硬変、肝臓病、狭心症、結核、高血圧、痔、十二指腸潰瘍、心筋梗塞、心臓病、蓄膿症、糖尿病、脳血栓、病後の体力回復、偏頭痛、リウマチなどがその例です。
これらの病名や症状の中で、良い方向への何らかの変化が最も多かったのが肝臓病でした。
肝硬変の患者さんの中には、その進行をくい止めたという例もありました。
続いて多かったのが糖尿病、高血圧、心臓病の順ですが、これらはいずれも生活習慣病といわれる現代病で、ウコンは、これらに適した薬草だといえます。

貴重な薬草ウコンの歴史

ウコンは英名ではターメリックといい、カレー粉に使われたりもしますが、日本でカレー粉に使われているのはオレンジ色に近い黄色で苦みのない秋ウコンです。ほかには、たくあんやカラシの色を出すのにも使われます。また、鮮やかな黄色が特徴なので染料として布などの染め物に使われます。このことからウコンは、黄染草(キゾメグサ)とも呼ばれます。

ウコンはキリストが誕生する以前から存在しているといわれ、その歴史は相当古いとされています。詳細は明らかになってはいませんが、日本に初めてウコンが輸入されたのも遙か昔のことです。

日本では、昔は大切な衣類をウコン染めの風呂敷に包んでおいたり、赤ちゃんの肌着にしたりと虫除けとして使われたり、女性の腰巻きにして防寒にと、とても重宝されて使われていました。

その昔、邪馬台国を治めていたとされる女王・卑弥呼の時代からウコンはありました。卑弥呼はもともと倭人で、中国の王にウコンを献上したという記録があり、倭国の人たちが体に巻いている布がウコンで染められたものだろうと、魏志倭人伝に書かれています。

その後の15~19世紀に沖縄本島を中心として存在した琉球王国の王朝では、砂糖などのほかに専売品だったとされていることから、ウコンがとても貴重な薬草だったことがうかがえます。ウコンは薬用としての効能があるだけでなく、染料や食料品の着色用・観賞用としても用いられ、利用の範囲が広いため、人々にとってとても必要性が高いものだったと思えます。

そんな貴重なウコンですから、栽培には王府の監視人が立ち会うほど、とても厳重な警戒のもとに行われていました。特に収穫の時の監視は厳しいもので、この厳重さは、ウコンが強力な繁殖力・生命力をもつ植物であることの証しです。しかし、この警戒の目をかいくぐり、夜中にウコンを掘り起こした人々もいたそうで、危険に身をさらしてまでも手に入れたかったほど価値がある植物とされていたのです。

ウコンとは

ウコンはショウガ科の多年草で、草丈は1メートル前後の大きさです。ショウガ科というだけあって、根茎のその姿はショウガにそっくりで、ゴツゴツした多肉質です。
花についてはあまり知られていないかもしれませんが、穂状でたくさん重なり合って咲き、とても美しい形をしています。
そして花が一ヶ月以上ももつことから、観賞用にも栽培されています。

ウコンの原産地はアジアの熱帯地域です。インドや中国の南部、日本国内では沖縄や鹿児島の一部の地域で自生しています。寒さに弱いため、冬になる頃には葉や茎は枯れてしまいます。

春ウコンといわれる「キョウオウ」と、秋ウコンといわれる「ウコン」がありますが、これは花をつける時期や、成分の含有量が違うために区別されています。
ウコンには多くの効能があるとされていますが、薬用に用いられるのは根茎の部分です。

ウコンの含有成分についてですが、主成分は黄色の色素のクルクミンという有効成分です。また、精油成分(エッセンシャルオイル)も含まれています。
ウコン(秋ウコン)と、キョウオウ(春ウコン)やガジュツ(紫ウコン)という類似種では、成分の比率が違ってきます。
クルクミンの含有量の多い順にあらわすと、ウコン、キョウオウ、ガジュツになります。精油成分の量では、ガジュツ、キョウオウ、ウコンの順に多く含まれています。

クルクミンはポリフェノール類の一種で、抗酸化作用をもつ抗酸化物質です。抗腫瘍や抗炎症作用があり、肝機能を改善します。
精油成分は多種が含まれ、代表的な作用には胆汁の分泌の促進や、健胃、抗菌があげられます。
そのほか、ウコンの根茎に含まれる成分には、鉄分や食物繊維、デンプンなどがあります。