二日酔いのしくみ

アルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒド→酢酸→水・炭酸ガスに変化していきます。分解にかかる時間は体重や体質によっても異なりますが、アルコール10cc分(日本酒換算で3合)を処理するのにおよそ9時間かかります。飲む量が多く、しかも飲み終わる時間が遅ければ、体内に翌日もアルコールが残った状態が続き、これによって起こるのが二日酔いだといわれています。

二日酔いは、アセトアルデヒドなどの毒性、アルコールの脱水作用、エネルギーの不足、体液の酸性化、低血糖などいろいろなことが複合して引き起こされます。主な症状としては、頭痛や吐き気、めまい、体のだるさがあらわれます。

激しい頭痛は、アルコールの脱水作用によって脳の細胞に含まれている水分が減り血管が縮むために起こります。また、肝臓の処理機能を超えてしまったアルコールの摂取により、処理できなかったアルコールや有害なアセトアルデヒドが血液中に入り体内を巡るのも、頭痛や吐き気の原因です。大量のアルコールの摂取により肝臓が分解に一生懸命になると、低血糖の状態になります。ビタミンB1が大量に使われてビタミン不足にもなります。低血糖を補うためには肝臓や筋肉からグリコーゲンが使われ、体内のアミノ酸も減少します。体内の水分が減りナトリウムやカリウムの濃度が高くなって、全身が脱水状態になっています。筋肉の収縮や血圧の調整をするカルシウム、マグネシウムが不足するので、脱力感もあります。脱水状態は水分を補給することで回復させましょう。

二日酔いを防ぐには、翌日まで体内にアルコールが残らない飲み方をしましょう。例えば、朝6時に起きる人の場合だと、9時間前にあたる前日の夜9時までに3合以下の日本酒を飲むようにすればいいです。ただし、個人差があるので、これでも二日酔いになる人もいるかもしれません。そういう人は、酒量をもっと減らしたり、飲み終わる時間を早くしたり、自分で調節してみましょう。

アルコールの処理能力

アルコールは肝臓で分解される

お酒を飲んだ時、体に入ってきたアルコールはどのように処理されているのでしょうか?
体内に入ったアルコールは、まず胃と小腸で吸収されます。そして、血液中に入ったアルコールは肝臓に運ばれていきます。アルコールは肝臓に入ると、『アセトアルデヒド』という有害な物質に分解されます。アセトアルデヒドは、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きで酢酸に分解されて、最後は水と炭酸ガスになって体外に排泄されます。

血液中のアルコールは肝臓で処理されていきますが、アルコールの処理能力は、飲む人の体の大きさやその日の健康状態など、かなり個人差があります。体重60kgの人が1時間で処理できるアルコール量は6.5gほどといわれています。これは、だいたい日本酒で0.3合、ビールで1/3本、ウイスキーダブルで1/3杯に相当します。だから、日本酒1合、ビール1本、ウイスキーダブル1杯のアルコールを処理するのには約3時間かかることになります。

お酒が強い人、弱い人?

このアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きには個人差があって、日本人の4割くらいの人は、その働きが弱いといわれています。そのために有害物質アセトアルデヒドが分解されにくく、アルコールを飲むと顔が赤くなったり、頻脈になったり、頭が痛くなったりと不快な症状が起こる人がいるのです。このように不快な症状があらわれる人は、体が受け付けないので、それ以上お酒を飲むことができません。しかし、ALDHの働きが活発なアルコールに強い人だと不快な症状があらわれないので、つい、どんどん飲酒量が増えてしまいます。ALDHはその間もアセトアルデヒドを分解するために一生懸命働いているので、肝臓が酷使され、疲れきってしまうのです。

ALDHには、アセトアルデヒドが高濃度にならないと働かないALDH1と、低濃度でも働くALDH2があります。このALDH2を多く持っているかどうかで、お酒に強いか弱いかが決まります。これは遺伝的なものなので、お酒に強い人、弱い人というのは、生まれつき持った体質ということになります。

お酒に強い人ほど飲み過ぎに注意しよう!

肝臓には、アルコールの分解のほかにも、栄養素の代謝、消化酵素・ホルモンの製造などといった、体の健康を維持するための重要な働きがありますので、アルコールの分解だけにかかわっていると、ほかの重要な働きに影響を及ぼします。

長い期間に渡ってお酒を飲みすぎていると、中性脂肪が増え、脂肪肝のリスクが高くなります。また、肝臓への負担が肝繊維症やアルコール性肝炎、さらに肝硬変、肝ガンを引き起こすこともあります。また膵臓(すいぞう)への影響もあります。急性膵炎は肝臓の強い人がお酒を飲みすぎることによって起こることもあり、糖尿病と合併することの多い慢性膵炎では患者の50%以上がアルコール性だといわれています。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害とは

アルコールにより引き起こされる肝臓疾患のことをいい、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、肝細胞ガンに進行します。大量のアルコールを摂取することで肝臓の細胞が変化してしまい、働きが衰えていくのです。

アルコールの過剰摂取でまず起こるのはアルコール性脂肪肝です。これは、肝臓がアルコールの処理を優先して脂肪の代謝を後回しにするために、代謝されない脂肪が肝細胞にたまる状態です。そのまま大量に飲酒を続けると、アルコール性肝炎が起こります。
アルコール性肝炎のなかには、肝性脳症(かんせいのうしょう)、急性腎不全、消化管出血などの合併症を伴い、1カ月以内で死亡に至る重症型のアルコール性肝炎もあります。重症化しない場合でも長期に大量飲酒を続けると、細胞が活性化して線維が増殖した状態のアルコール性肝線維症(かんせんいしょう)を経て、アルコール性肝硬変になることがあります。肝硬変では文字どおり肝臓が硬くなり、肝機能の低下が進みます。また、ウイルス性肝炎を合併している場合には肝硬変に進行するのが速く、肝細胞ガンを合併しやすいため注意が必要です。

飲酒の機会は比較的男性に多いでしょうが、同じ量を長期に渡り飲酒すると女性のほうが早く肝障害があらわれることがわかっています。

何が原因?

アルコール性肝障害の原因は慢性的な大量の飲酒です。これが肝臓に障害を引き起こすことは昔からよく知られていますが、実際には、どの程度飲酒すると危険なのでしょう。

日本では1日平均150g以上のアルコールを飲む人を大酒家(たいしゅか=おおざけ飲みのこと)と呼びますが、この量はお酒に換算すると、日本酒で約5合、ビール(大ビン)で約5本、ウイスキー(ダブル)で約5杯になります。
アルコールの分解能力は人によって違うので、適量がどれくらいかというのは具体的にはいえませんが、日本酒にして1日5合以上を毎日10年間飲み続けた大酒家は、5人に1人は肝硬変になるといわれています。
日本酒1合に含まれるアルコール量は約28gです。なお、厚生労働省の『健康日本21』運動では、節度ある適度な飲酒として、純アルコール量は1日平均約20g程度とされています。

どんな症状?

アルコール性脂肪肝は日本酒換算で5合程度を5週間ほど続けただけで引き起こされるので、大量飲酒者のほとんどに認められますが、通常は無症状です。1日に3合以上の飲酒を続けると、およそ2割の人がやがてアルコール性肝炎を発症し、発熱、食欲不振、黄疸(おうだん)、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢などの症状があります。
さらに症状が進んでアルコール性肝硬変に至ると、黄疸のほか、下肢のむくみ、腹水、出血や吐血などの症状があらわれるようになります。

お酒が好きで普段よく飲んでいるという人は、定期的に検査を受けるのがおすすめです。
断酒できることが理想ですが、どうしてもやめられないという人は、できるだけ肝臓に負担をかけないようにお酒を上手に飲むようにしましょう。