ウコンには、さまざまな薬効がありますが、肝臓への薬効は、非常に注目しています。神戸大学で生化学を専攻している西塚博士の報告では、「とくに春ウコンはアルコールの代謝によい」と行っています。
東北大学の奥野教授の、日本薬学会の特別講演における発表です。「ウコンのクルクミンが肝炎や肝障害に対して有効」であると発表しています。
また、糸川教授の研究成果もあります。「通常は芳香性健胃薬として用いられていますが、クルクミンは、胆汁分泌作用があり、肝炎などの肝臓障害に有効」と発表しています。
ウコンが肝臓によい理由は次のように説明できます。
ウコンに含まれるクルクミンが胆汁の分泌を促進させるのですが、胆汁の役目は胃から送られてきた内容物と十二指腸で混じり、脂肪を分解吸収すること、これがまず第一です。脂肪分が胃の中に入ってくると、体は、それを消化するために脂肪分を乳化して消化酵素の作用を受けやしやすくし、十二指腸から胆汁を出すのです。高脂肪食ですと、当然、この胆汁が多量に分泌されます。
ところが、多量の胆汁は大腸の内壁にすみついている腸内細菌に悪影響を与えてしまうことが知られています。
大腸で消化されるのは、小腸で吸収されなかった食物繊維がほとんどですが、それを消化するのが腸内細菌の大切な役目です。腸内細菌の数は、およそ100兆個。重量に換算すると1kg~1.4kgもあります。その腸内細菌が、胆汁の主成分である胆汁酸に反応して、胆汁酸を「メチルコラントレン」という発ガン物質に変えてしまうのです。
脂肪分たっぶりの肉はたしかにおいしいでしょう。「肉が熔ける」という表現をする人もいるくらいですから。でもウコンが胆汁の分泌を促してくれるからいいや、なんて考えてはいけません。
次は、解毒作用をどんなふうに助けるのかというと、簡単に肝臓の働きを解説すると、肝臓は体にとって有害な物質、たとえば腹の中で腐敗したものや食品添加物や薬などの毒性を減らしたり分解したりして体の外に排出しようとします。
役に立たないと判断された物質は胆のうに送り込まれたあと、胆汁として放出され、便に混じって体の外に捨てられます。
胆汁は1日におよそ1200mlほど、生成されていますが、その胆汁の分泌を促すのが、クルクミンです。
肝臓の故障(病気)は大きく分けると次の4タイプになります。
- ウイルス性肝炎
- 薬物性肝臓障害
- アルコール性肝臓障害
- 肝臓ガン
です。
最近はウイルスや食品添加物、それに薬を簡単に口にしてしまう環境など、肝臓を疲れさせてしまう条件が急増しています。肝臓は別名「沈黙の臓器」といわれるだけにタフなことは、間違いないのですが、それだけに、気づいたときは機能がかなり低下している場合が多いのです。
では、このタフな臓器が肝硬変になるまでをたどってみましょう。ある実験によれば、一日に一升の酒を二日続けて飲ませれば、それだけで簡単に脂肪肝になってしまうそうです。
脂肪肝自体はたいしたことではないのですが、そうなると、小豆色をしている肝臓が黄ま色く勝れ、この状態がそのまま長く続けば、やがて肝線維症かアルコール性肝炎が待っています。肝線維症とは、コラーゲンという固く細い糸のようなタンパク質が溜まっていく病気です。この線維はアルコール代謝でできるアセトアルデヒドの作用でつくられます。
アセトアルデヒドはあの二日酔いの原因物質です。
アルコール性肝炎は大部分が急性ですが、肝細胞の破壊がいちじるしく、肝細胞がどんどん死んでいき、肝線維症と同様に細胞が線維に変わっていきます。
この状態を放置しておくと、やがて肝硬変を引き起こし、肝臓の細胞に結合組織が増えて肝臓自体が硬くなってしまいます。こうなるとなかなか治りにくく治療が困難になります。
肝臓には大動脈からくる肝動脈と、胃腸から吸収した栄養分を運ぶ門脈の2種類の血管がありますが、肝硬変になると、線維化して硬くなるわけですから、肝臓の中の血管が押されたり変形したりして、流れる血液が極端に少なくなってしまいます。
たとえば、肝臓に入れなくなった門脈血は、別ルートで静脈に流れこみ、食道に静脈癖をつくり、何かのきっかけでそれが破裂し、大量の血を吐いたりします。おいしそうなまぐろの赤身を、アルコール度数の強いお酒の中に浸けてみてください。赤身が白っぽく変化するのが分かると思います。
簡単に言えば、肝硬変です。毎年2万人もの人が命を落とす肝硬変はアルコール性肝臓障害の終着駅なのです。
でも、誤解している人がたくさんいるので断っておきますが、酒を飲みすぎたからといって、酒だけが原因で肝臓ガンになることはありません。専門家によれば、これまでアルコールが原因とされてきた肝臓ガンの多くが、じつはC型肝炎ウイルスであることが分かりました。
肝臓ガンの原因はC型肝炎が80% 、B型肝炎15% 、残りの5% がアルコールの飲みすぎや、ピルやホルモン剤や抗生物質などの薬剤などと考えられています。しかし、すでにウイルス性肝炎にかかっている人にはこの話は通じません。
肝硬変発症後、約半分の人が10年の内には発症するというデータがあります。ところで、肝細胞が線維の固まり状態になってしまったのが肝硬変ですが、いったん線推化してしまうと、もう元には戻りません。形態が変化し、つまり細胞が変性して肝臓内に分布している血液の循環系統にひずみが起こります。
では、どんな症状があったとき肝機能は低下しているのでしょうか。
次ぎのような症状です。
- 黄痘(肌や白目が黄色くなる)
- 血管がクモのような形で浮き上がる。
- 女性様乳房(男性の乳房がふくらんでくる)
- 肝萎縮(肝臓が小さくなる)
- 腹部静脈癖(お腹の血管がもりあがってくる)
- 出血斑(赤い斑点ができる)
- 痔になりやすくなる。
- スネ毛がなくなる。
- 浮腫(ふくらはぎがむくんでくる)
黄痘の黄色い色は、はビリルビンです。便が黄色いのはビリルビンが含まれているからです。もともとは胆汁の中に含まれていて、腸管へ分泌されたあと、大部分は便と一緒に排出されます。黄痘が進んだ人の便は白くなります。
現代人の肝臓は、昔の人より大きくなっていますが、添加物、脂肪、アルコール、ストレスなどの肝臓の負担がそのころよりも増えているからといわれています。
脳も胃も、筋肉も神経も、体はどれも密接なつながりを持っています。どの部分の働きが機能しなくても、ほかに影響を与えます。ランクをつけるわけではありませんが、現在の環境からいえば肝臓が最も働きすぎといえるでしょう。